

Climate Integrateは、レポート「ネットゼロを評価する2025:日本企業10社の進捗評価」を公表しました。
本レポートは、合計排出量 (※) が日本の温室効果ガス排出量の約40%(2023年度)に相当する日本企業10社について、各社の気候変動対策における情報開示と取組を以下の4つの観点で評価しています。
- 排出量の把握と開示
- 排出削減
- 排出削減目標の設定
- 気候変動対策への貢献とオフセット
なお、本レポートは、2023年に発表した「ネットゼロを評価する:日本企業10社の気候目標レビュー」の改訂版で、同じ10社を評価しています。
(※)スコープ1・2排出量の合計。電力企業のスコープ1排出量と、他の企業のスコープ2排出量には重複があり得る。計算には各社の国内外の排出量を用いた。
【本レポートのポイント】
- 10社すべてがネットゼロ目標を維持しているが、取組の進展は不十分である。
- 10社すべてで目標と対策の質・信頼度の評価が「低い」ままである。
- 2021–2023年度のスコープ1・2排出量の傾向は企業ごとに様々である。
- 再エネ電力への転換の速度は依然として遅い。
- 各企業は、目標を達成する上で、開発段階の技術に大きく依存している。
- 各企業の目標と対策は、地球温暖化の1.5℃抑制に必要な水準を満たしていない。
- 10社は、その目標・対策の強化が求められている。
- 政府は、企業の気候変動対策のポテンシャルを高める役割を担っている。

(執筆者コメント)
コーポレートアナリスト 真辺 佑佳
「すべての対象企業が2050年のネットゼロ/カーボンニュートラル目標を設定しているが、十分に透明性が高く、信頼度の高い気候変動対策を実施している企業はない。だが、いずれの企業も、対策ごとに短期・中期・長期のタイムラインと想定する排出削減量を示しながら、当該セクターの1.5℃目標に整合した費用対効果の高い対策を採用することで改善が可能である。」
プログラム・ディレクター 小俵 大明
「日本全体の脱炭素化には、電力セクターが他のセクターに先駆けて2050年よりも前に脱炭素化する必要がある。だが、評価対象の電力企業は、ネットゼロ目標年を2050年に設定し、電力の脱炭素化を主にアンモニア火力や水素火力、CCSなどの新技術に頼り、再エネの導入が求められる水準に届いていないことは懸念される。これらの新技術には費用対効果や排出削減効果に課題が多い技術も含まれているため、日本全体のネットゼロ目標の実現可能性を損なうことが危惧される。」
代表理事 平田 仁子
「本レポートの対象10社は、日本において排出の多い部門のトップ企業に当たる。国内の主要な排出企業の気候変動対策が不十分で曖昧な部分が多いままであることは、日本全体のネットゼロ目標の実現を不確かなものにするものである。政府はこの実情を踏まえ、適正なカーボンプライシングなどの各種政策措置を通じ、企業の排出削減目標や対策の質と信頼度の向上を図ることが重要である。」
研究員 サルマ ラギニ
「本レポートで評価した日本の10社は、国内だけでなくグローバルに事業を展開し、気候変動に対して大きな責任を負っている。しかし、求められる水準と現在の取組との間には依然大きなギャップがある。これらの企業において取組の進展が不十分であることは、他国の低炭素移行にも影響を与える可能性がある。」
